TKG PRIVATEERS RALLY PROJECT

ラリーにプライベーター参戦する日々を綴るブログ

【ZN6 86】 LSDのイニシャルトルクを考える

久々のブログ記事、今回はまじめにチューニングのことを。

 

最近、イニシャルトルクの異なるデフを搭載して乗り比べる機会があったのでインプレを。イニシャルトルクとデフの効き方については説明しないのでググってください。

ファイナルギアの交換について

事の発端はローファイナルギアの投入。
86の純正ファイナルは前期4.1、後期4.3で加速がもっさりしており、日本のラリーの狭いステージでは2速の高回転域を使わなくてはいけなかったり、ヘアピンで1速へのシフトダウンが必要になることもあり、使いにくい。

何故使いにくいのかをちょっと解説すると、
ラリーではジムカーナやサーキットとは異なり、路面変化が有りかつコーナーの先が読めない状況のため、コーナリング中の挙動変化を嫌う。
そのためアクセルオフでエンジンブレーキが大きくかかる高回転域は使いづらい。
一方で3000回転を下回るような低回転では挙動は安定するが立ち上がりの加速が悪くなる。そのためにコーナリング中に中回転域を保つギア比が重要になるのだ。
今回ローファイナルギアをいれることで、コーナリング中のギアが1段上がり、中回転域が維持できるというな算段だ。ギアはハイエース用の5.1をチョイスした。

www.amazon.co.jp

2種類のLSDを乗り比べてみる

ファイナルギアを入れるのに、歯当たりやバックラッシ調整やらで部品を取り寄せたりして時間がかかるので、組み込み作業中に替えのLSDを借りて搭載することにした。
普段使用しているLSD:OS技研デュアルコアLSD 1.5way イニシャルトルクなし

osgiken.co.jp


今回借りたLSD:CUSCO RS 2way spec F イニシャルトルク:6kgf・cm

www.cusco.co.jp


普段使っているOS技研さんのLSDは設計的に非常に理に適っていること、開発の熱意、ものづくりに対する真摯な姿勢に惚れて搭載したものだ。イニシャルトルクがゼロなのでチャタリングがなく、競技走行をしない限りはオープンデフと感触的に変わりなく快適に走行可能なので非常に気に入っている。一方競技走行では、アクセルオンで瞬時に差動制限(いわゆるロック)が働き、マイルドさと強さを併せ持ついいとこどりなのだ。
そこそこ良いお値段なので、ラリーでは使用している人はそんなに多くない印象だ。
一方、今回借りたクスコは業界最大手でラリー界でも使用者が多い。

LSDの違いもあるが、基本的にはアクセルオンでトルク感応して差動制限が働く点では同じと判断し、イニシャルトルクの有無、つまりターンイン時の差動制限の有無で運転がどう変わるかが今回の比較のポイントといえる。

簡単にいうと、「コーナー手前でブレーキングしてからターンインしてアクセルオンするまでの間にどう違うか」が今回の比較ポイントだ。
ちなみにOS技研も1.5wayなのでブレーキング時から差動制限するが、効きはごくごくマイルドだ。

インプレ:ターマック

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イメージ画像

イニシャルトルクが大きい方が感触がいい。
リアのスタビリティが上がった感じがして、ステアリングを切り込むのに迷いがなくなる。ステアリングを切る量は増えているように思えるが、切った分曲がれば問題なし。前輪の横力が限界になり、いわゆるアンダーステアが発生するまで安心して切り込める。リアのボデー剛性が上がった感じがするのが不思議である。

イニシャルトルクなしだと、スタビリティが低く感じるためターンインでリアが滑り出してしまうのではないかと、ステアリングの切り込みにやや迷いが発生する。

ロングコーナーでゆっくりとステアリングを切れる場面ではどちらもそれほど大きい差は出ないが、ショートコーナーで一気にステアリングを切り込む場面だと高イニシャルトルクの利が出そう。
レーシングドライバーの谷口が以下の主旨の発言をしていたのを思い出す
(少し記憶があやふやだが)
・ステアリングの切る量が少ないのがいいクルマではない
・切る量は多くても安心して切り込めるクルマがいいクルマだ
→そのためにはLSDのイニシャルトルクを上げたほうがコーナリングが速くなることもあり得る

インプレ:グラベル

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※イメージ画像

狭い「林道のような」コースでテスト実施。
低イニシャルトルクの方がコントロールしやすい。
低イニシャルトルクだと低車速でも頭が入るため、姿勢のコントロールがし易い。
ステアリングで振って進入することが容易に可能。
逆に高イニシャルトルクでは、高車速で慣性エネルギーを持った状態でないと姿勢作りがしにくい。コーナーがルーズな路面の場合、ブレーキングとうまく合わせて姿勢作りができないと、低車速でアンダーステアに耐えながらのグリップ走行になるか、オーバースピードで落ちそうになってしまいそう。
ハイパワー4WDのように十分に加速ができればよいが、ただでさえグラベルで加速しない後輪駆動だと姿勢作りがし易いほうがメリットがあるのではないだろうか。

一方でどんな状況でも車をうまく振り回せる超上級者だと、コーナーのターンインからアクセルオンまで車両特性が変わらない(差動制限し続ける)ため、意図しない挙動が出にくいというメリットはありそうだ。

インプレ:一般道

低イニシャルトルクのほうが運転しやすい。
まあ、当たり前か。
高イニシャルトルクでは、信号待ちからの右左折のチャタリングはもちろん、
ハブベアリングが消耗しきったような出だしの重さを強く感じる。
また、燃費にも影響するだろう。

テストの結果、一長一短となった。
インプレは個人のドライビングスキルやスタイルにもよるものだし、一概には言えないが興味深い結果となった。
どちらかというとグラベル走行に関しては、私のドライビングスキルが足りないことによる部分が大きいので、上級者はイニシャルトルクを迷わず大きくするべきではないだろうか。

 

 

5/8追記

あらためて発見。
5.1ファイナル積んでOS技研さんのイニシャルかけてないデフに戻したら、
踏んでコーナーに入るのと、パーシャルでコーナリングするので全然違う。
怖くても踏んだ方が安心ということがわかる。
左足ブレーキ+スロットルでも差動制限かかるかもしれないので使えるかも。

Rally Monte-carlo Historique 2020 その10

(その9のつづき)
2月4日 Common Leg2→Final Leg 天気:晴れ

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フィニッシュゲート

ついにラリーもファイナルステージのチュリニ峠とブロー峠を残すのみ。
リーファンに有名なのはチュリニ峠だが、実際に走ってみると、
どちらかというとブロー峠の方がテクニカルかつ路面変化も激しく難しいコースに思える。
特に、日陰のアイスバーンは現地のドライバーや目がいい白人ドライバーではないと見分けるのが難しい。(私の経験不足も大いにある)

そんなコースも今年のような完全ドライでは難易度も下がり、余裕でアベレージにのれるコースへと変わってしまった。

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チュリニ峠を疾走する競技車

さて、Final Legでの我々のスケジュールだがラストステージは短いのでサービスは無し。
我々サービス隊はチュリニ峠で観戦するのがここ数年の慣しになっている。

 

・チュリニ峠でのラリー観戦

さあ、宿を出発して峠道を登っていく。
ベンツVクラスの大きさが気になるが、そこそこ飛ばして頂上へ向かう。
FRかつサマータイヤなので車を借りるときは心配だったが、雪は全くなく、楽々登れてしまった。

途中、ランチアデルタEVOに煽られて、広くなったところで道を譲ったら爆速で抜かれた。
聞くところによると、現地のローカルラリードライバーの練習車の類らしい。
練習車にしては高級車だ。。。

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頂上のレストランはラリープレートだらけ

20時ごろにチュリニ峠の頂上に到着。
ラリーカー(1号車)の到着予定時刻は23時30分ごろ。
早く着きすぎた感もあったが、あまり遅いとラリー車とかぶってしまう。

時間があるので、名物のレストランでコーヒーを飲んだ。
このレストランはモンテカルロで開催されるラリーのたびに観戦者が立ち寄るため、店内の壁はラリープレートで埋め尽くされている。
店外の窓ガラスもラリー関係のステッカーだらけだ。
往年のラリープレートを見て、疾走するヒストリックラリーカーを想像しながら、本場のコーヒーで体を温める。

 

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パノラマ撮影するとこんな感じ、おしゃれでしょう。

隣ではアルピーヌクラブのディナーが行われていた。
そうこうしていると現地で我々のチームを応援してくれているおじさん達登場。
学生たちにビールをくれた。自分は持参したノンアルコールビール
それでもなお、時間に余裕があるので、ベンツの中で酒盛り開始。寒いので車内が嬉しい。
外では焚き火もしており、軽食用に買っておいたパンを木の枝に刺して焼いて食べた。

 

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夜闇の中の焚き火はただ美しい

オフィシャルの兄ちゃんが凄くて、待ってる間に暇なのか、おもむろにロケット花火を雪に突き刺して飛ばす。
また、ドローンを飛ばして写真撮影もしている。ビールも飲んでる。オフィシャルなのにやりたい放題。観客も大盛りあがり!
この後ラリー中も花火を飛ばし続けていたが、ドライバーがびっくりして、運転に影響が出たりしないのだろうか笑

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ロケット花火おじさん

23時30分ごろからラリーカーが到着。予想通り、多くの車がアベに乗れているので、きっちりオンタイム走行をしながら抜けていくのみ。
正直に言うと迫力に欠ける。とはいえ、競技区間リエゾンとでは車の動きや真剣さが違うので見ていて興奮する。
チームの車両が全車通過したのを見届けて、チュリニを下り、競技車がゴールするモナコのフィニッシュへと向かった。

 

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ゴールするチェリー

フィニッシュにつくとすでにシビックがゴール地点でスタンバイしていた。ビールを渡して乾杯。この時のためにカルフールで買い出しをしておいたのだ。
(私はこのあとタクシーがあるので飲んでいない)

その後、チェリー、トレノが到着。
学生と一緒にフィニッシュゲートに集合して、用意したシャンパンをクルーがあけてファイトしていた。
一通り終わった頃にレビンが到着。
ナビの海野さんが走ってタイムカード出すが1分遅着してしまったが、完走を祝う中そんなことはこの際どうだっていい。
完走したのその後みんなでゴールして写真撮影。
最後にもう一台のオレンジのトレノが到着して、写真撮影してその日は終了。
モンテカルロから宿のあるビルフランシェまでみんなを載せて帰った。

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競技車が並ぶパルクフェルメ

お酒は一滴も飲んでいないが、全車完走のお祝い気分で道中ワイワイしながら帰れたのが懐かしい。

 

(ラリー中の記事はこれで終わり)

Rally Monte-carlo Historique 2020 その9

2月4日 Common Leg2→Final Leg 天気:晴れ

予定:SR11後サービス Bouvieres(ブヴィエール)→Niceカルフール→ビルフランシェの宿→チュリニ峠

 
この日はバランスから途中SRをこなしながらモナコへ戻るルートで、
モナコへ到着するとこの日の深夜のステージを残してフィニッシュとなる。
WRCのクラシックモンテの最終ステージはフィニッシュした参加者のうち、上位何十台のみが参加を許されていたそうだが、
Rallye Monte Carlo Historiqueはフィニッシュした参加者全員が最終ステージを走ることができる。

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この日は我々のサービスカーはバランスからモナコへの道中、
一箇所のみのサービスだった。

・サービス1
SR11後のサービスポイント
シビック:通過
チェリー:給油、フロントホイールからの異音確認、ホイールとタイロッドエンドの干渉?→干渉なし。サービス時間中に原因究明できず。
レビン:給油、次のサービスポイントがブレーキフルードないらしいので
車載して輸送をお願いした。
トレノ:給油、マフラーエンド補修の確認、穴の補修用にアルミ板をホースバンドで
固定していた部分がずれており修正を試みたが、時間中に完了できなかった。

今年は私のサービスでは特に大きなトラブルはおきないようだ。

サービスを終えてあとはビルフランシェの宿へ向かうことになったが、
時間がかなり余っている状況だったので、ニースのカルフールによっていくことにした。

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サービス地点の風景、山々が美しい

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各車ドライ路面のモンテでスパイクが抜け落ちている

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リタイアして運ばれる車両?

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カルフールへの道中、競技車の後ろにつく


カルフール
巨大なカルフールでおみやげを探す。
プロバンスのクッキーのようなマジパンみたいなお菓子「カリソン」を購入。
また、チュリニ観戦用にビール×24とノンアルコールビール×6を補充。
宿へ戻って、少々休憩したのちファイナルステージのチュリニ峠へ向かった。

(つづく)

 

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フランスでもエギ売ってる

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プロバンス名物カリソン



Rallye Monte Carlo Historique 2020 その8

2月3日 Common Leg1 天気:晴れ

予定:SR7後サービス Vassieu-en-Vercors(ヴァシュー=アン=ヴェルコール)→SR10後サービス Die(ディ)

この日からはClassificationの結果をうけた順番でスタート。
我々のチームの車両は成績が振るわなかったようで下位に固まっていた。
サービスとしては車両がある程度まとまって来るため、1日に複数地点をこなすのには負担が少なくやりやすい体制だ。

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サービス前を通過する他チームのフェアレディZ


この日はサービスカーの運転をボランティアでサポートに来てくれたフランス人のR氏が担当してくれた。彼は他の人が運転すると車酔いするとのことなので、私は一切運転をしなくていいという。
しかも、運転がとてもうまい。
シフトダウンのブリッピングシフトアップの変速ショック等も完璧。
英語も堪能だったので、2人でベラベラ会話しながらサービスポイントへ向かった。

・道中で開講されたR氏のフランス講座

ー道の名前はどういう意味? D/N/A
フランスの道は「D234s」のように表現がされている。
その意味は
D:Domestic?県道、local govermentが管理している
N:National  road 国道、国が管理している
A:Autoroutes 高速道路
D234sの末尾のs:不明、North?South?等同じ道が複数あるときに区別している?

ーフランスの旧車事情
日本車はパーツがなさすぎて維持ができない。
対して欧州車はパーツが手に入りやすい。
eBay、サードパーティのメーカーが主な入手先。
OEMで未だに純正部品を作っているメーカーは殆どない。
メルセデスだけは50年代等のパーツがディーラーで買える。

ー旧車ナンバープレート
日本では1桁ナンバーを維持するためには、住民票等を移したりして車検を通せば可能だが、
フランスは名義変更した際に古いナンバープレートは必ず新EUナンバープレートに交換しなくてはならず、維持不可能。
そのため古いナンバープレートで1オーナーの車は非常に貴重だそう。

ーR氏の所有車
ビート、S660、s600、N600、インテグラ、SB1シビック×2・・・その他合わせて12台
ホンダオタクである。

ーフランス人が英語を話せない本当の理由、そして高い失業率
フランス人は英語を小中学校で習ってはいるが、大半は話せない。
なぜなら一生フランスで過ごすと思っているので、進んで英語を学ぼうとしないからである。
フランス人は誇り高いとか言われているが、そんなことはなく要は怠惰なのである。
国外に行って働くことも考えない。

また、高い失業率についても仕事がないだけではないらしい。
仕事がないとぼやく人の多くは熱心に仕事を探していない。
仮に仕事についたとしてもすぐにやめてしまい、また仕事がないとぼやく。
(そして失業保険を受取るのだろう)
こうした流れでフランスの若者は悪循環に陥っているそうである。

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サービス地点にした駅の駐車場、電車は1度も来なかった

・サービス1 with キャンター
そうこうしているうちにサービス予定地へ。
チームの下調べ(Googleストリートビュー)で駐車場のようなところでサービスを行う予定であった。
到着してみると小さなホテルの駐車場であった。サービスの準備をしていると、ホテルのオーナーに駐車場だからやめてくれと怒られたので移動。モータースポーツに好意的なフランス人が多いが、中にはこんな人もいる。
ホテルから移動して付近を捜索していると、近くの駅前の広場が空いていたのでそちらをサービス拠点に決定。

各車サービスインしたが、特に滞りなくサービス完了。
近くの民家の飼い犬が道路をフラフラしていて競技車に何度か轢かれそうになっており気が気でなかった

この日は運転がなかったので、いい天気の中、私は缶ビール(クローネンブルグ)1本をあけてご満悦。他のサービスメンバーから白い目で見られていたとかいないとか。

 

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駅に待機する?電車

・サービス2 with キャンター
次はValenceへの帰り道の最終サービス。
シビックのウォッシャーが出ないという連絡が直前で入り、急いでウォッシャー液をスーパーで購入。
その帰りに驚きの光景が。
なんと白でノーカラーリングのAudi Quatoro S1 E2が走行しているではないか!
驚きの加速で過ぎ去っていく姿はとってもExcitingだった。
きっと、今大会に出場しているウォルター・ロールのファンだったのだろう。

戻ると同時にシビックがサービスイン。ウォッシャーホースが長すぎてファンに巻き込まれたようだった。ホースを交換して装着し、修理完了。ウォッシャー液も補給。

チェリーはフロントタイヤのバイブレーションがとてもひどく、タイヤを外して確認した。フロント・リアタイヤとも外観は異常なし。パンク修理剤が剥がれてバランスがずれてきたのかもしれない。ただ、交換できるタイヤはスパイクタイヤしかないので、そのまま走ってもらう。いざとなってからスパイクに交換する算段だ。
レビン、トレノは特に問題なくサービスアウトしていった。

 

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サービス2は道路脇の待避所で

 ・Valenceへ
帰る途中に給油を兼ねてスーパーで買い出し。
ついでにR氏の彼女おすすめのワインを購入。私はビールを大量購入し夜に備える。
ホテルに帰るとボロネーゼが用意されており、舌鼓。
今年のメンバーの料理は当たりが多い気がする。

この日はタクシー業務がなかったので、ゆっくりとクローネンブルグを堪能して早めの就寝ができた。
(つづく)

Rally Monte-carlo Historique2020その7

2月2日 Classification Leg 天気:晴れ 

予定:SR4後サービス Le Cheylard(ル・シェラール)→SR6後サービスValence

 

この日はClassification Legと名付けられている。
Concentrationの後半にあったアベレージ区間SR1-3に加えて、この日のSR4-6の結果を総合して、次の日からの出走順が決定するためClassification(格付け)なのだ。
出走順はRallye Monte Carlo Historiqueでは大きく影響する。
雪の多い年だと、早い出走順はラッセルになってしまうのはもちろん、SRは専有されていないので、先頭は一般車と遭遇した時のリスクが高いように思える。
逆に、コース上のスタック車に足止めされ大量減点を食らう可能性もあるので、後半もリスクが有る。
あとは、ゴミ収集車やバカでかい除雪車にコースを塞がれることもあるので、それにかち合うかは時の運次第だろう。

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昨年出場した際に遭遇したスタック車。この後足止めをくらった自車は大量減点を食らった

 

・クルー送迎
前日の時点では、スタート予定時刻はモナコスタート組は遅くなるという情報であったが、深夜に発表されたスタートリストはゼッケン順。朝5時半に学生に叩き起こされ、
6時出発でValenceのパルクフェルメにクルーを送迎。
ホテルに戻り少し休んだのち8時30分に出発。サービスポイントへ。

・サービス1 with キャンター
ベンツで山道を少々飛ばして10時ごろに到着。
道中、睡眠不足できつそうな学生にナビを残して寝てていいよと伝えると、
ある学生が「起きたら崖の下にいたりして」と発言。
非常に失礼なやつであるが、笑ってしまった。

サービスポイントにつくとスペインのチームが隣で体制を整えていた。
彼らは競技車を待つ間、エスプレッソマシンで入れたコーヒーを飲んでおり、美味しそうだったので、話に行く。もちろん、おこぼれ狙いだ。
話を聞いていると何とカルロスサインツが来るという。
コーヒーをもらって飲みながら、ダカールの写真を見せてもらったりして、彼を待っているとポルシェがサービスイン。
期待してウォッチしているとドライバーズシートから出てきたのは少し大柄な男性でサインツではない。
果たして、その人はサインツの兄アントニオだった。(一応、スペインのヒストリックラリーチャンピオンですごい人のようだ
スペインジョークに騙された!!

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左に立つ男性がアントニオ


我々の競技車はまだだったので待っていると今度は新型アルピーヌ軍団が到着。
近くの広場に集合していた。
2/2,2/3で ラリールートのチェイスをするイベントが開催されているらしい。

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アルピーヌ軍団

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アルピーヌ軍団もラリープレートがついている


そうこうしているとようやく各車サービスイン。どの車もとりたてて問題なく、給油・窓拭き・食料の補給等ルーティンメニューを滞りなく終了し、我々は次のサービスポイントであるValenceへ向かった。

 

 

・サービス2
サービス2の地点の近くのマクドナルドで昼食。
きれいなフランス人女性の店員さんが日本語で話しかけてきた。
漫画やアニメで日本語を学んだらしい。
非常に親切な雰囲気だったので向こうの口車にのせられて、パンケーキのおまけがつくエスプレッソまで注文してしまった。
ついついまったりしていると、学生から近くに競技車が接近しているという情報あり。急いでサービス地点へ向かった。
だが、競技車はサービス付近を通ってCPを経由してから、また戻ってきてサービスインするルートを辿っており、1度目の接近をサービスイン間近と勘違いしていいたため、しばらく到着を待つことになった。

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マックはどこでも味が同じ。安定の味。

今回はこの日の最終サービスであったが、各車特段問題なく給油のみで終了。
片付けをしていると、地元のおばちゃん2人組に話かけられ、美味しいピザ屋があるから買いに行けと勧められた。Googleのレビューやメニューの種類等、色々見せてもらい、小一時間ほどレクチャーを受ける。
せっかく慣れない英語で話しかけてくれているし、現地の人々との交流も大事なので、今からテイクアウトするから、予約の電話を入れてくれ、とお願い。

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結構山の上にあったピザ屋

ピザ屋へ着くとピザ屋をひとりで切り盛りしている青年が

「さっきの2人のおばさんのうち、犬を連れてた女性は俺の母ちゃんなんだよ」

どおりで熱心に勧めてくるわけだ!
(お母ちゃんじゃないほうのおばちゃんのほうが熱心に勧めてきていたが)

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焼いている間にもひっきりなしに予約の電話が入る。かなりの人気店らしい。

ピザを6枚購入し、Valenceへ。
宿へ帰って食べると非常にうまい。おばちゃん、少し疑ってごめん。


本場のピザを堪能後、パルクフェルメまでクルー送迎。
その後、帰るやいなや、再びパルクフェルメへ行って、近くに飲みに行っていた
別のクルーを送迎してこの日のお勤めを終了した。
この日あたりから私のサービスカーがクルーからタクシーと呼ばれ、私はタクシー運転手と呼ばれるようになった。
(つづく)

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パルクフェルメには所狭しと競技車が並び、一般開放されている

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我々のチームの競技車

 

Rally Monte-carlo Historique2020 その6

2月1日  天気:曇り→雨

予定:ビュイレバロ二でサービス→ケータリング買い出し→Valenceで夕飯準備

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クルテゾンのCP

サービス地点のビュイレバロに到着し、サービス予定時刻まで9時間ほど時間があったのでサービスカーで仮眠。
7人乗車で寝ると狭い・・・。
仮眠を取っているところに電話があり、競技車はクルテゾンのCPに設定時刻の3時間前くらいに到着予定なので、そこにサービス地点を変更するという連絡だった。
せっかく陣取ったのに移動だ。

目をこすりながら移動して競技車到着予定時刻の1時間半前に到着。
来た道を戻る方向だったので、少しトーンダウンしたがなんとか頑張る。
競技車が思いのほか早く来ているという情報だったので、
急いでサービス地点を探さなくてはいけなかったが、
去年、町の入口にある待避所でサービスがあったことを思い出しそこに向かう。

到着。良かった!誰もいない、広いので4台を安心してサービスができる。
携行缶の配置や工具を準備したりして競技車の到着を待つ。
通り過ぎる他のエントラントが手を振ったり、クラクションを鳴らしてくれる。
アジアから来た黄色のジャケットの我々は名物になっているようだ。

そうこうしているうちに各車バラバラとサービスイン。
3時間ほど余裕があったので、サービスにかけられる時間は十分すぎるほど。
車両を見ている間、クルーはベンツVクラスで寝てもらう。
途中、ホンダ学園の先生率いるサービス部隊も合流したので、盤石の体制だった。

<各車の状況>
チェリー:最初に到着。タイヤの感触よくない。アライメントが狂っている感触、タイヤにパンク修理剤が入っていたためと思われるが、(大会前に雪がないとわかったため、スタッドを抜いた際、空気が抜けたため修理剤で補修)トーを修正。左右空気圧に差をつけたらよくなった。
ラリコンの電源が落ちる問題があったが、修理完了。基板と筐体の相手にビスが4本ほど転がっており、基板の裏側の半田に接触してショートしていた模様。

レビン:モバイルバッテリー足りないので、ベンツで充電した。出発時に充電したまま、クルーに渡すのを忘れてしまい、後からクルテゾンのCPまで追いかけて渡すことができた。クルーもサービスも睡眠不足のため、忘れないように車のステアリングとかにメモして貼っておくべきだった。

シビック・トレノ:問題なく軽い整備のみでパスしていった。先にクルテゾンに行って寝るとのこと。

 

全車サービス後、モバイルバッテリーを渡し忘れたのでクルテゾンまでお届け。
ついでに、朝ごはんの軽食(ココアとクロワッサン)を主催者にもらって回復。
去年参加した際にここで軽食が得られることはリサーチ済なのだ。

その日は我々のサービス班が担当するサービスはこの地点のみだったため、夕飯の準備のためヴァランスに移動した。
ラリー中も外食していては食費がバカにならないため、自炊なのだ。
フランスは夕食を外で食べると安くても1000円はくだらない。チーム員の数を考えると相当な金額だ。

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この日の夕飯はミネストローネ

時間にかなり余裕があったため、ゆっくりと高速を移動したが、どうにも眠い。気づいたら、運転している私以外の全員が寝てしまったので、さすがに危ないと感じて、途中サービスエリアで1時間ほど仮眠してから、ヴァランスへ移動。

ヴァランスのINTERMARCHE(大手スーパー)で買い出し。
残った野菜(前の宿から食材も運んでいるのだ)を処分するためにミネストローネを作ることに。他にはもも肉の照り焼きorカレー風味焼きの予定。

宿に到着してチェックイン。こちらも去年使った宿で5人ほどで泊まれるロッジを何軒か借りている。

早速料理開始。私はチキン焼き担当に。
レンジで5分チンしてから焼き目をつけて、玉ねぎと一緒に焼き鳥ソースをかけて炒めて完成。普段、料理をしないのでこれくらいが限度なので許して欲しい。
宿にいついている野良猫がしきりにおねだりをしてきたので鳥の骨をあげたら喜んで食べていた。

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焼いたチキン

 

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宿にいついた野良猫

 

その後は他のサービス班達に夕食を配ったり、パルクフェルメにクルーを迎えに行ったりして、長い長いコンセントレーションが終わったのだった。(つづく)

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パルクフェルメの近くで整備するエスコート

<おまけ>
上の車両のサービスメンバーと目があったので、とりあえず話しかけてみたら、ミッションブローして、その破片が後ろに伴走していたサービスカーのフロントガラスに直撃したそう。

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ミッションオイルだらけのサンプガードが悪臭を放つ

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ミッションの破片が直撃したサービスカー、まるで銃撃にあったようだ

 

Rally Monte-carlo Historique 2020 その5

1月31日 天気 晴れ

予定:ビルフランシェ発→ホンダディーラーで忘れ物回収→スーパーで買い出し
→車検→スタート見送り→サービスポイント(ビュイレバロ二予定)へ移動

 

この日からいよいよ競技開始である。
初日は夕方にスタートして夜通し走り通し、翌日の夜にヴァランスに到着する最もハードなスケジュールであり、
欧州の各所のスタート地点から競技車がヴァランスへと集合するためコンセントレーションと呼ばれている。
我々はモナコスタートでヴァランスへの道のりは近い方だが、それでも1000km以上はある。
夜中も各地点でサービスを行い、その間クルーは休憩したり、軽食をとったりして少しでも体力回復につとめる。
去年ドライバーで走った感じだと、後半はかなり眠気との戦いで、その中で3つの競技区間をこなさなくてはいけないため、体力がないとかなり厳しい。

 

さて、我々のサービス隊は朝からビルフランシェの宿で荷物を積み込んだ。
ケータリングの荷物が多数と携行缶115L。
その後、あるドライバーがメディカルサーティフィケート等を忘れたということで、ラリー中持っていかない荷物を置かせてもらっているホンダフランスのディーラーに行き回収。
しかし、何と運転免許証が見つからず。日本に置いてきたらしい。。。残念、不出走!、というのが一瞬頭によぎる。
(基本的に国際免許があっても本国の免許を同時に携行しないと、免許証は効力を発揮しないのだ)

見つからないものはしょうがないので、モナコへ出発、途中スーパーマーケットSUPER Uでサービスの食料を買い出し。
建次郎さん:バナナ、松波さん:オレンジ・・・とドライバーの好みの食材を買う。
サービスの食料も紛れて購入 笑

買い出しのため、モンテカルロのパルクフェルメへ送れて到着すると、先行していたメンバーにより参加受付は終了し、車検が行われていた。ステッカー等貼り付けを手伝い車検へ。
スタッドレスを履いたトレノはタイヤにEマーク(欧州規格認可)がなかったため、交換を命じられる。
去年は全くそんなところは見てなかったのに。。。
雪が全くないという情報により、いろんなタイヤを各競技車が履いてきたため、タイヤ検査が厳しくなったものと思われる。

さて、日本の運転免許証がなかったドライバーも運良く書類OKだったので、ホッと一安心。(その後免許証は発見されたかもしれない)
4台とも車検を無事通過した頃には16時を過ぎていた。スタートまでだいぶ時間があるので、パルクフェルメをぶらぶらしたのちモナコを少し観光して腹ごしらえをした。
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パルクフェルメの競技車たち

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ハンバーガー10€くらい。そこまでうまくなかったような。。。

 

その後パルクフェルメに戻りスタート前の参加者達と談笑。WRCレジェンドのブルーノ・サビーやピエル・ラルティーグといった往年の名ドライバーと記念撮影させて頂いた。
また、スタート前の恒例のテントの中での軽食ビュッフェも堪能。スイーツの本場はケーキがやはり美味しい。
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ビュッフェ会場
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ケーキがうんっまい!

さて、いよいよスタートだ。学生がスポンサーボードを手に競技車とともにセレモニアルゲートをくぐる。
各クルーとも気合十分。トラブルなく無事に帰ってきて欲しい、いや違う、直せる範囲のトラブルを起こして無事にゴールして欲しい。
トラブルが多少起きないとサービスとしても面白くないし、学生の勉強にもならないからだ。
こんな考えでは上位チームではサービス失格かな。

今年は各車スタート順が若くて、ゼッケンも近いのであっという間だった気がした。
来年を見据えて、ついでにスタッドレスタイヤ・スタッドタイヤの銘柄をチェックした。

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チェリーのスタート風景
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タイヤは各車三様

さて、1つ目のサービスポイントへはモナコから300km。
サービスポイントへ行く道中のサービスエリアでサービス作戦計画。各人の役割の明確化、時間配分を行った。
みんな疲れているのか眠そうだった。移動の車中も爆睡。

自分もサービスエリアからは運転を交代し、しばし睡眠。高速の終点で再度ドライバー交代し、
自分でドライブして最初のサービス地点へ向かった。

 

(次の日に続く)