TKG PRIVATEERS RALLY PROJECT

ラリーにプライベーター参戦する日々を綴るブログ

【ZN6 86】 LSDのイニシャルトルクを考える

久々のブログ記事、今回はまじめにチューニングのことを。

 

最近、イニシャルトルクの異なるデフを搭載して乗り比べる機会があったのでインプレを。イニシャルトルクとデフの効き方については説明しないのでググってください。

ファイナルギアの交換について

事の発端はローファイナルギアの投入。
86の純正ファイナルは前期4.1、後期4.3で加速がもっさりしており、日本のラリーの狭いステージでは2速の高回転域を使わなくてはいけなかったり、ヘアピンで1速へのシフトダウンが必要になることもあり、使いにくい。

何故使いにくいのかをちょっと解説すると、
ラリーではジムカーナやサーキットとは異なり、路面変化が有りかつコーナーの先が読めない状況のため、コーナリング中の挙動変化を嫌う。
そのためアクセルオフでエンジンブレーキが大きくかかる高回転域は使いづらい。
一方で3000回転を下回るような低回転では挙動は安定するが立ち上がりの加速が悪くなる。そのためにコーナリング中に中回転域を保つギア比が重要になるのだ。
今回ローファイナルギアをいれることで、コーナリング中のギアが1段上がり、中回転域が維持できるというな算段だ。ギアはハイエース用の5.1をチョイスした。

www.amazon.co.jp

2種類のLSDを乗り比べてみる

ファイナルギアを入れるのに、歯当たりやバックラッシ調整やらで部品を取り寄せたりして時間がかかるので、組み込み作業中に替えのLSDを借りて搭載することにした。
普段使用しているLSD:OS技研デュアルコアLSD 1.5way イニシャルトルクなし

osgiken.co.jp


今回借りたLSD:CUSCO RS 2way spec F イニシャルトルク:6kgf・cm

www.cusco.co.jp


普段使っているOS技研さんのLSDは設計的に非常に理に適っていること、開発の熱意、ものづくりに対する真摯な姿勢に惚れて搭載したものだ。イニシャルトルクがゼロなのでチャタリングがなく、競技走行をしない限りはオープンデフと感触的に変わりなく快適に走行可能なので非常に気に入っている。一方競技走行では、アクセルオンで瞬時に差動制限(いわゆるロック)が働き、マイルドさと強さを併せ持ついいとこどりなのだ。
そこそこ良いお値段なので、ラリーでは使用している人はそんなに多くない印象だ。
一方、今回借りたクスコは業界最大手でラリー界でも使用者が多い。

LSDの違いもあるが、基本的にはアクセルオンでトルク感応して差動制限が働く点では同じと判断し、イニシャルトルクの有無、つまりターンイン時の差動制限の有無で運転がどう変わるかが今回の比較のポイントといえる。

簡単にいうと、「コーナー手前でブレーキングしてからターンインしてアクセルオンするまでの間にどう違うか」が今回の比較ポイントだ。
ちなみにOS技研も1.5wayなのでブレーキング時から差動制限するが、効きはごくごくマイルドだ。

インプレ:ターマック

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イメージ画像

イニシャルトルクが大きい方が感触がいい。
リアのスタビリティが上がった感じがして、ステアリングを切り込むのに迷いがなくなる。ステアリングを切る量は増えているように思えるが、切った分曲がれば問題なし。前輪の横力が限界になり、いわゆるアンダーステアが発生するまで安心して切り込める。リアのボデー剛性が上がった感じがするのが不思議である。

イニシャルトルクなしだと、スタビリティが低く感じるためターンインでリアが滑り出してしまうのではないかと、ステアリングの切り込みにやや迷いが発生する。

ロングコーナーでゆっくりとステアリングを切れる場面ではどちらもそれほど大きい差は出ないが、ショートコーナーで一気にステアリングを切り込む場面だと高イニシャルトルクの利が出そう。
レーシングドライバーの谷口が以下の主旨の発言をしていたのを思い出す
(少し記憶があやふやだが)
・ステアリングの切る量が少ないのがいいクルマではない
・切る量は多くても安心して切り込めるクルマがいいクルマだ
→そのためにはLSDのイニシャルトルクを上げたほうがコーナリングが速くなることもあり得る

インプレ:グラベル

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※イメージ画像

狭い「林道のような」コースでテスト実施。
低イニシャルトルクの方がコントロールしやすい。
低イニシャルトルクだと低車速でも頭が入るため、姿勢のコントロールがし易い。
ステアリングで振って進入することが容易に可能。
逆に高イニシャルトルクでは、高車速で慣性エネルギーを持った状態でないと姿勢作りがしにくい。コーナーがルーズな路面の場合、ブレーキングとうまく合わせて姿勢作りができないと、低車速でアンダーステアに耐えながらのグリップ走行になるか、オーバースピードで落ちそうになってしまいそう。
ハイパワー4WDのように十分に加速ができればよいが、ただでさえグラベルで加速しない後輪駆動だと姿勢作りがし易いほうがメリットがあるのではないだろうか。

一方でどんな状況でも車をうまく振り回せる超上級者だと、コーナーのターンインからアクセルオンまで車両特性が変わらない(差動制限し続ける)ため、意図しない挙動が出にくいというメリットはありそうだ。

インプレ:一般道

低イニシャルトルクのほうが運転しやすい。
まあ、当たり前か。
高イニシャルトルクでは、信号待ちからの右左折のチャタリングはもちろん、
ハブベアリングが消耗しきったような出だしの重さを強く感じる。
また、燃費にも影響するだろう。

テストの結果、一長一短となった。
インプレは個人のドライビングスキルやスタイルにもよるものだし、一概には言えないが興味深い結果となった。
どちらかというとグラベル走行に関しては、私のドライビングスキルが足りないことによる部分が大きいので、上級者はイニシャルトルクを迷わず大きくするべきではないだろうか。

 

 

5/8追記

あらためて発見。
5.1ファイナル積んでOS技研さんのイニシャルかけてないデフに戻したら、
踏んでコーナーに入るのと、パーシャルでコーナリングするので全然違う。
怖くても踏んだ方が安心ということがわかる。
左足ブレーキ+スロットルでも差動制限かかるかもしれないので使えるかも。